光が7色だから色収差がある
 ザイデルの5収差は、たとえば黄色のような単色光で生じる収差だが、色収差は太陽光のような白色光で出現してくる。白色光は各色の混合したものでプリズムは白色光を虹の7色に分ける性質をもつため、いくら単色光の各収差のまったくないレンズでも白色光で像を結ばせると色による収差が起る。この色収差は色光の波長により屈折率や焦点距離が異なることが原因だ。色収差には軸上の色収差と倍率による色収差とがある。軸上色収差は、ガラスの屈折率が波長ごとに違うため、色によってピントがずれてしまう現象だ。そのずれが光軸方向(縦方向)に出てくろので、縦色収差ともいう。この収差が大きいと、光軸上に赤色から紫色の別々の像を結ぶため、たとえば緑色にピントを合わせたとき、その周りに赤や紫のにじみがかかりピントが甘くなってしまう。通常のレンズでは、いろいろなガラスを使用して、たとえば2つの色のピントをそろえたアクロマートなどの色消しレンズによりこの色収差を補正しているが、赤と紫にピントを合わせても緑色がはずれてしまう。この残存色収差を2次スペクトルと呼んでいるが、これをも補正しているのが、3つの色までもそろえたアポクロマー卜の性能をもつキヤノンの蛍石レンズとUDレンズだ。軸上の色収差は絞り込むことによって目だたなくなるが完全には除去できない。一方、倍率の色収差は、色によって画面に写し込まれる像の大きさが異なってしまう現象だ。光軸に対して垂直方向に出てくるので、横色収差ともいう。この収差は、色によって焦点距離が異なることから発生するものでいくら分散のちがうガラスを使って軸上色収差を補正しても、色に対する焦点距離が一致するとは限らない。だから、色によって焦点距離が変わったとすれば、当然像の大きさも色ごとに変わることになる。画面の周辺部では、線が色の縁どりをもち、鮮鋭度が大きく低下してしまう。そして、この収差は、絞り込んでもまったく改善されないので種々のガラスや凸凹レンズを組み合わせて補正している。この色収差は、カラーフィルムを使用する場合はもちろん、黒白フィルムを使用する場合も大きな影響を与える。色収差という名称から黒白写真に関係ないと誤解しがちだが、あくまでも光の波長の問題なので、黒白でもボケやニジミがでてくる。






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