収差がレンズ性能を左右する
 結像の理想条件をすべて満たした理想像は現実のレンズからは得られないが、ではこの理想像とのずれである収差をもっと詳しく研究してみよう。レンズに入る光線の内から、光軸に近い光(傾き角の小さい)だけを選びだすと、それにより作られる領域(近軸光によるガウスの領域という)の近軸焦点の像には収差が認められない。だから、近軸光だけを利用するレンズがあれば理想像を得ちれると思える。しかし、写真レンズでは口径を大きくとって、画面の隅々まで十分な明るさをもった像として光を結ばせなければならないことや画角についても広角、ズーム、望遠などと要求も多様なこと、また、被写体からの反射光はさまざまな色光(波長光)を混合させた白色光なのでレンズを形作るガラスの色分散の影響があることなど、到底、近軸光だけでレンズを作ることは不可能だ。この収差にも、画像への現われ方でさまざまな種類がある。波長の違いから起る色収差と、単色光によっても生じるザイデルの解析した5収差(球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差)とがあげられる。これらの収差が複雑にからみ合って画像に出現してくるので、どのレンズも必ず何らかの収差が残っているのが普通だ。これを残存収差という。一般によく耳にするレンズの味とかボケ味といわれるレンズ描写の癖は、この残存収差がどう残っているかで決まるが、写真を見る人の感覚によってその評価はさまざまに異なっくるものだ。






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